重慶市概要
令和2年4月17日
1.基本情報
2.歴史
重慶は古来水上交通の要衝として栄えてきました。約3000年前の周の時代、「巴国」の都が置かれましたが、その後「巴郡」として秦の管轄下となりました。南北朝時代、「巴郡」は「楚州」となり、隋に至って「楚州」は、嘉陵江の古称「渝水」にちなんで「渝州」となりました。この「渝」が重慶の略称として現在も使われています。
北宋時代、「渝州」は「恭州」となり、南宋時代の1189年、宋皇帝の子が恭州の王に封じ同じ年に帝位についたことから、慶事が重なったので「恭州」を「重慶府」と改名しました。以降「重慶」の呼称は現在に至るまで使われています。元末の農民反乱軍の領袖の一人である明玉珍はその建国した「大夏」の都を重慶に定めましたが、その後の明清時代には再び「重慶府」が設置されました。
「重慶市」となったのは中華民国時代の1929年のことです。1937年から1946年までは、国民政府の「戦時首都」となり、当時の中国における政治、経済、文化の中心で、国民政府が南京に戻った後も直轄市とされました。1949年10月の新中国成立後も西南地域の要衝として中央直轄市となりますが、1954年には四川省に編入されました。その後、1997年に再び中国で4番目の中央直轄市となりました。
1929年 重慶市が成立
1937年 国民党政府が戦時首都として遷都
1949年 中華人民共和国成立、中央直轄市
1954年 四川省管下に編入
1983年 全国初の計画単列市(指定都市)に指定
1992年 長江沿岸開放都市に指定
1997年 全国で4番目の中央直轄市
2007年 成都市とともに全国都市農村調和的総合改革試験区として承認
2010年 市内に国家級重点経済開発区である「両江新区」が成立
2011年 成都重慶経済区区域計画が国務院から正式承認
2017年 自由貿易試験区(FTZ)に指定
2020年 成都市とともに「成渝地区双城経済圏」の建設を承認
3.気候
(出所:『重慶統計年鑑2017』)
(注1)重慶は、「中国3大かまど」(重慶、武漢、南京)の一つといわれ、夏の暑さはきわめて厳しく、時には日中最高気温が40度を超える日が続きます。
(注2)特に冬季は極端に日照時間が少なくなります。(参考:北京:2420.3時間(『中国統計年鑑2016』)、東京:1841.7時間(気象庁HP2016年数値))
4.政治行政組織
★中国共産党重慶市委員会
書記:陳敏爾
副書記:唐良智
★重慶市人民代表大会常務委員会
主 任:張軒
★重慶市人民政府
市長:唐良智
副市長:呉存栄、陸克華、屈謙、鄧恢林、李明清、李波、熊雪、鄭向東
★重慶市政治協商会議
主 席:王炯
5.主要経済指標
(出所:『重慶統計年鑑』各年版)
6.中国国内における位置づけ
重慶市は従来の基幹産業である自動車・オートバイ産業、装備製造業の他、ITを中心としたハイテク産業および化学工業などの新たな産業の発展に力を入れています。
電子情報産業は、2009年後半より米の「ヒューレット・パッカード」、台湾系の「フォックスコン」等が相次いで進出を決定し、関連企業とともに、主に「西永微電子産業園区」(重慶市内のIT産業園区)で生産を行っています。2018年、重慶市は世界全体の約25%にあたる5730.23万台のノートパソコンを生産しており、世界最大の生産拠点となっています。
自動車産業では,重慶は中国有数の自動車生産拠点として,長安汽車との合弁で「フォード」や2017年に工場ができた「ヒュンダイ自動車」などが乗用車の生産、慶鈴汽車との合弁で「いすゞ」が商用車の生産を行っており、2018年の自動車生産台数は約205.万台です。
現在は、電子部品(集積回路)、液晶パネル、ロボット・スマート産業用機器、新エネルギー自動車・スマート自動車、シェールガスなどの産業の振興を計画しており、単一的な産業構造から多角的な産業構造への転換を図っています。特に、重慶市を含む西南地域はシェールガスの埋蔵量が多いことで知られています。重慶市の涪陵鉱区は中国の国家級鉱区に指定されており、2018年には中国国内初のシェールガス工場が完成しました。
重慶市には、2010年6月、上海浦東新区、天津濱海新区に次ぐ3番目、内陸都市初の国家級開発区として正式に成立した両江新区があります。先端製造業、金融、物流、商業、展示など総合的機能を備えた開発区であり、内陸部における対外開放の拠点として位置づけられています。また、この両江新区を含む重慶市の一部地域が、2017年4月に自由貿易試験区(FTZ)に指定されました。
2011年に重慶から新疆を経由しドイツに至る貨物鉄道・渝新欧鉄道の運行が開始され、2019年の運行便数は1500便を超え、ノートパソコンや自動車、日用品や工芸品など幅広い品物が運ばれています。その後は、重慶から貴州、広西チワン自治区を通じシンガポールまでをつなぐ、物流ルート(陸海新ルート)も開通し、「一帯一路」構想における主要な物流拠点の一つとして成長しています。
2015年には中国・シンガポール間における3番目の国家級プロジェクト対象地域となり、物流、航空、金融、情報通信の4分野で協力関係が進んでいます。また、2020年1月には、国家発展改革委員会等により、全国11ヵ所の都市農村融合型試験区の一つとして、「成渝地区双城経済圏」が承認されました。今後、重慶市と成都市が連携して内陸開放のプラットフォームづくりを目指そうとしています。
位置 | 北緯28度(奄美大島とほぼ同緯度)~32度、東経105度~110度 |
面積 | 8.24万km2(北海道とほぼ同じ) |
人口 | 3,101.79万人(2018年常住人口) |
別称 | 渝(Yu) |
2.歴史
重慶は古来水上交通の要衝として栄えてきました。約3000年前の周の時代、「巴国」の都が置かれましたが、その後「巴郡」として秦の管轄下となりました。南北朝時代、「巴郡」は「楚州」となり、隋に至って「楚州」は、嘉陵江の古称「渝水」にちなんで「渝州」となりました。この「渝」が重慶の略称として現在も使われています。
北宋時代、「渝州」は「恭州」となり、南宋時代の1189年、宋皇帝の子が恭州の王に封じ同じ年に帝位についたことから、慶事が重なったので「恭州」を「重慶府」と改名しました。以降「重慶」の呼称は現在に至るまで使われています。元末の農民反乱軍の領袖の一人である明玉珍はその建国した「大夏」の都を重慶に定めましたが、その後の明清時代には再び「重慶府」が設置されました。
「重慶市」となったのは中華民国時代の1929年のことです。1937年から1946年までは、国民政府の「戦時首都」となり、当時の中国における政治、経済、文化の中心で、国民政府が南京に戻った後も直轄市とされました。1949年10月の新中国成立後も西南地域の要衝として中央直轄市となりますが、1954年には四川省に編入されました。その後、1997年に再び中国で4番目の中央直轄市となりました。
1929年 重慶市が成立
1937年 国民党政府が戦時首都として遷都
1949年 中華人民共和国成立、中央直轄市
1954年 四川省管下に編入
1983年 全国初の計画単列市(指定都市)に指定
1992年 長江沿岸開放都市に指定
1997年 全国で4番目の中央直轄市
2007年 成都市とともに全国都市農村調和的総合改革試験区として承認
2010年 市内に国家級重点経済開発区である「両江新区」が成立
2011年 成都重慶経済区区域計画が国務院から正式承認
2017年 自由貿易試験区(FTZ)に指定
2020年 成都市とともに「成渝地区双城経済圏」の建設を承認
3.気候
気候 | 亜熱帯性気候 |
年平均気温 | 18.5度(注1) |
年間降水量 | 1345.8mm |
平均湿度 | 80% |
年間日照時間 | 1150.5時間(注2) |
(注1)重慶は、「中国3大かまど」(重慶、武漢、南京)の一つといわれ、夏の暑さはきわめて厳しく、時には日中最高気温が40度を超える日が続きます。
(注2)特に冬季は極端に日照時間が少なくなります。(参考:北京:2420.3時間(『中国統計年鑑2016』)、東京:1841.7時間(気象庁HP2016年数値))
4.政治行政組織
★中国共産党重慶市委員会
書記:陳敏爾
副書記:唐良智
★重慶市人民代表大会常務委員会
主 任:張軒
★重慶市人民政府
市長:唐良智
副市長:呉存栄、陸克華、屈謙、鄧恢林、李明清、李波、熊雪、鄭向東
★重慶市政治協商会議
主 席:王炯
5.主要経済指標
指標 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
国内総生産(億元) | 17558 | 19500 | 20363 | 23605 |
GDP成長率(%) | 10.7 | 9.3 | 6.0 | 6.3 |
1人当たりGDP(元) | 57902 | 63689 | 65933 | 75828 |
都市居住者可処分所得 (元/年) |
29601 | 32193 | 34889 | 37939 |
農村居住者純収入 (元/年) |
11549 | 12638 | 13781 | 15133 |
固定資産投資(億元) | 17361 | 17440 | N/A | N/A |
社会消費品小売総額(億元) | 7271 | 8067 | 7977 | 8667 |
対外貿易 輸出(億元) | 2677 | 2883 | 3395 | 3712 |
輸入(億元) | 1462 | 1624 | 1827 | 2079 |
外資直接投資(実行ベース) (億米ドル) |
113.42 | 101.83 | 102.73 | 103.1 |
6.中国国内における位置づけ
重慶市は従来の基幹産業である自動車・オートバイ産業、装備製造業の他、ITを中心としたハイテク産業および化学工業などの新たな産業の発展に力を入れています。
電子情報産業は、2009年後半より米の「ヒューレット・パッカード」、台湾系の「フォックスコン」等が相次いで進出を決定し、関連企業とともに、主に「西永微電子産業園区」(重慶市内のIT産業園区)で生産を行っています。2018年、重慶市は世界全体の約25%にあたる5730.23万台のノートパソコンを生産しており、世界最大の生産拠点となっています。
自動車産業では,重慶は中国有数の自動車生産拠点として,長安汽車との合弁で「フォード」や2017年に工場ができた「ヒュンダイ自動車」などが乗用車の生産、慶鈴汽車との合弁で「いすゞ」が商用車の生産を行っており、2018年の自動車生産台数は約205.万台です。
現在は、電子部品(集積回路)、液晶パネル、ロボット・スマート産業用機器、新エネルギー自動車・スマート自動車、シェールガスなどの産業の振興を計画しており、単一的な産業構造から多角的な産業構造への転換を図っています。特に、重慶市を含む西南地域はシェールガスの埋蔵量が多いことで知られています。重慶市の涪陵鉱区は中国の国家級鉱区に指定されており、2018年には中国国内初のシェールガス工場が完成しました。
重慶市には、2010年6月、上海浦東新区、天津濱海新区に次ぐ3番目、内陸都市初の国家級開発区として正式に成立した両江新区があります。先端製造業、金融、物流、商業、展示など総合的機能を備えた開発区であり、内陸部における対外開放の拠点として位置づけられています。また、この両江新区を含む重慶市の一部地域が、2017年4月に自由貿易試験区(FTZ)に指定されました。
2011年に重慶から新疆を経由しドイツに至る貨物鉄道・渝新欧鉄道の運行が開始され、2019年の運行便数は1500便を超え、ノートパソコンや自動車、日用品や工芸品など幅広い品物が運ばれています。その後は、重慶から貴州、広西チワン自治区を通じシンガポールまでをつなぐ、物流ルート(陸海新ルート)も開通し、「一帯一路」構想における主要な物流拠点の一つとして成長しています。
2015年には中国・シンガポール間における3番目の国家級プロジェクト対象地域となり、物流、航空、金融、情報通信の4分野で協力関係が進んでいます。また、2020年1月には、国家発展改革委員会等により、全国11ヵ所の都市農村融合型試験区の一つとして、「成渝地区双城経済圏」が承認されました。今後、重慶市と成都市が連携して内陸開放のプラットフォームづくりを目指そうとしています。